2022年11月より募集をしておりました「月刊保育絵本エピソード大賞」。2023年1月15日をもちまして、応募を締め切りました。おかげさまで全国の幼稚園・保育園・認定こども園の先生方から、月刊保育絵本を使ったことでの素敵な子どもたちの言葉、様々な保育活動への展開など、多くの興味深く、感動的なエピソードが寄せられました。応募していただいた先生方、誠にありがとうございました。
幼児教育保育用品協会では、そのエピソードの中から厳正な審査・選定を行い、大賞・各賞を決定いたしましたのでここにご報告いたします。

大賞

新潟県 あおい幼稚園(M.H 先生)

賞品/絵本100冊+絵本コーナー棚

牛乳パックを短冊形に切ったものを十字に重ねて手裏剣を作り『忍者ごっこ』を楽しんでいた年少組に忍者特集「にんじゃしゅぎょうに ちょうせんだ」の本が届きました!
本を見るなり子どもたち、「これ作って!」と新聞紙の忍者頭巾のおねだり! 男の子も女の子も頭巾をかぶって、手裏剣とチラシの剣を手にあちこち戦いに出かけて楽しんでいました。
「明日はこれやりたい!」と、翌日からは段ボールの空気砲でのペットボトル忍者倒しが始まりました。初めは何が忍者を倒したのか分からなくて「目に見えないお化けが出てきて倒している!」「僕も見えたよ!」との意見。そのうち顔を覗き込んだ時にボン!と空気が当たり、髪の毛が後ろになびき「風だ!」「やっぱり風が出てきた!」と判明したようで、交代交代で風を感じて、段ボールが壊れては直して楽しみました。

段ボールの空気砲の連続写真ページ

続いて火が付いたのは、秘密の忍者手紙です。保育室にあるオレンジ色の石鹸で画用紙に絵を描いて水に浸してみたのですが、絵は出てきませんでした。「紙の色が違うんだよ!」との声があがり、いろんな紙で試したけれどやっぱり出てきません。「だめだね~」「失敗ばっかりだね〜」「家の石鹸は白いんだよ。それ持ってこうか?」「うちのは緑!」と子ども達からの提案もあり、後日茶色、白、ピンクの石鹸で試すことになりました。すると、その中で白の石鹸がただ1つ大成功!「忍者の石鹸はこの石鹸だったんだねー」「私もやりたい!」「僕もやる!」とそれぞれ絵を描いては水に浸し、秘密の手紙を作って楽しみました。たくさんできて洗面器がいっぱいになったので窓辺にひもを張り、紙を干すことにしました。降園時「忍者の手紙持って帰る!」と窓を見たところ、今度は乾いてただの紙になっていました。「どれが僕のかわからない!」「名前書いてないからね。」「そうだ!もう1回水に入れればいいんだ!」とまた、みんなで水に入れることになりました。けれど、絵は全く出てこないか、うっすらとしか浮かんでこなかったのです。「忍者の手紙は1回しか見れないんだね~」と子どもたちの感想でした。まだまだ、研究の余地がありそうです。たくさん遊べるわくわく本です!

絵を石鹸で描いて水に浸すと・・・現れた!

選評

子どもたちが一冊の絵本を通して、自主的にやってみたいという気持ちが生まれ、失敗してもそこで諦めたり興味がなくなったりすることもなく、試行錯誤することを楽しんでいる様子がよく伝わるすばらしいエピソードです。先生も読むだけでなく、子どもたちからの言葉や提案を受け止め、子ども主体でいろいろな活動に広げて毎月の月刊絵本を活用されているのでしょう。それにしても、最後の「忍者の手紙は1回しか見れないんだね~」の一言には参りました!

(幼児教育保育用品協会 月刊保育絵本エピソード大賞事務局)

審査員特別賞

岡山県 ひばり保育園(福井誠子先生)

賞品/絵本30冊+どうぶつ本立て

月刊保育絵本8月号の〝マークはっけん〟を見て、自分の周りにどのようなマークがあるのか、保育園の中を探してまわった。その後、保護者から「出掛けると、マークを見つけることに夢中になり、親子でいろいろなマークを見つけて楽しみました」「オリンピックのピクトグラムに興味をもっているようです」という話も聞いた。子どもからは、「先生、小さい人は、字が読めないからマークを描いて知らせたらいいんじゃない?」などの声が出てきた。そこで、自ら選んだ遊びの時間に、紙とペンを準備し、いつでもマークを描くことができるように環境を作った。園内の絵本コーナーやトイレ、水道など、いろいろなコーナーに5歳児が作った自作のマークが付くようになった。

「マーク はっけん」のページ

無藤 隆 先生
(白梅学園大学名誉教授)

選評

マークを探す活動が月刊絵本の特集から始まり、園で探し、家庭や出かける先でも探します。園内のいろいろな場に子どもたちが作ったマークを貼って、字が読めない小さな子どもにも知らせるようになりました。小さな模様がただの飾りではなく、何かを伝えるためのものだと発見し、自分たちでも作り出したのです。受け止め理解し、身近な環境で探し、自分たちでも作り手となる。まさに保育として展開していく素晴らしい活動です。

審査員特別賞

埼玉県 ひまわり南幼稚園(A.H先生)

賞品/絵本30冊+どうぶつ本立て

月刊保育絵本6月号のカタツムリのシールで遊んでいた時、男の子がシールを全て重ねていました。「全部重ねたの?」と聞くと、「これはママが子ども達をおんぶしているんだよ」と教えてくれました。とても可愛い表現で、微笑ましい瞬間でした。

シールで遊ぶページ

猪熊 弘子 先生
(名寄市立大学特命教授)

選評

子どもの発想って本当に面白いですよね。
かたつむりのお母さんが子どもたちをおんぶしているところ、という子どもの表現に親子の温かな触れあいがあることが思い起こされ、嬉しくなりました。

審査員特別賞

福岡県 シマウマ保育園県庁前(平山さおり先生)

賞品/絵本30冊+どうぶつ本立て

うちの園では、月刊絵本は自分のロッカーの中に入れてあり、好きな時に自分で取り出して見れるようにしています。
4月に入園してきたA君。保護者の方がまだ言葉がでないことを心配されていました。
でも、A君はとにかく絵本を見るのが大好きで、自分のロッカーから月刊絵本を取り出しては、一緒に読んでいました。特に「図鑑」のページはお気に入りで、食べ物一つひとつ指をさして、単語をゆっくり話し、「モグモグ、おいしいねー」などと言葉をかけていました。
さて、園のおやつでは時々蒸しパンがでるのですが、A君はこの蒸しパンが苦手。入園当初から、蒸しパンが出ると、「おやつはいらない!」と口を開けてくれません。ところが、10月号に載っていた蒸しパンの写真を見せて、「蒸しパン、一緒だねー」と声をかけたところ、A君の中で、「むしパン」の響きと、実物の「蒸しパン」が結びついたようで、モグモグ食べ始めました。
それから、A君はこの「むしパン」のページがお気に入りに‥‥。「これなーに?」の保育士の問いかけに「むしパン」と、堂々と答えられるようになりました。
子ども達はまだまだ出会ったことのないものを、絵本から知ることが多く、繰り返し読み聞かせをすることで言語を習得していきます。
月刊絵本は、子ども達の可能性を引き出してくれる宝箱のように感じています!

大豆生田 啓友 先生
(玉川大学教育学部教授)

選評

絵本のような視覚的情報は、子どもの現実世界と言葉や想像などの頭で思い描いた世界をつなぐ役割もします。絵本の世界と現実世界がつながることで、現実世界がより豊かになることがありますが、この事例はまさにそれがよくわかるものです。日常的に絵本を個々が自由に取り出せる環境もいいですね。

*審査員特別賞につきましてはランダムにコメントを頂いております。

やった賞

埼玉県 ひまわり南幼稚園(Y.O先生)

賞品/絵本10冊

4歳児クラスで、月刊保育絵本のシール遊びをしていました。その月は、いろいろな食べ物のシールの中から、食べたい物をお皿の上に貼っていくという遊びでした。食べ物の好き嫌いの多い子が「これ食べられるようになりたいからお皿に乗せよう」と、普段は食べない物もいくつかお皿に乗せていました。偶然その中の1つがその日の給食に出て「あ! これさっきの絵本にも出てきたね」と声をかけると、その子が「さっきこれお皿に乗せたからちょっと食べてみようかな」と一口食べることができました。普段なかなか嫌いな物にチャレンジできないことが多いので驚きました。

すごいね賞

宮崎県 朝日保育園(M.U先生)

賞品/絵本10冊

自由遊びの時間、一人の4歳児が月刊絵本をもってきて、「この表紙のぞうをつくりたい!」と言ってきました。その表紙を見ると、牛乳パックで作られた親子のぞうが載っていました。せっかく子供たちから出たアイデアなので「つくってみる?」と、クラスみんなで取り組むことにしました。保護者にも声をかけて、牛乳パックや廃材を集め、製作に使った牛乳パックは300個以上でした。製作時間も1ヶ月以上かかりましたがとても素敵なぞうができ、「バービーちゃん」と名前も付けました。
一人の子の、月刊絵本に乗っていた表紙への興味から、一人の夢をみんなで叶えるほかの子たちの優しい気持ちを感じることができたすてきな体験でした。

へえ〜賞

岐阜県 瀬尻保育園(M.O先生)

賞品/絵本10冊

4歳児クラス「食品サンプル職人さん」についてのページを読んでいた時、「この美味しそうなパフェ、実はにせものなんだよ~」と言うと「え~‼ 本物みたい‼」「本物かと思った‼」と驚く子どもたち。一人の男の子が「お店の前とかにあるよね!」と気がついた。周りの子も「あるね!」「見たことある!」と思い出し始めた。どうしてにせものの見本が置いてあるのかを子どもたちと一緒に考えると「本物だとくさっちゃう!」「見本があった方が選びやすい!」「美味しそうだとお客さんが沢山くる!」と子どもたちから沢山の意見が出た。
疑問をなげかける事で、自分たちで考え、新たな発見をすることができ、よい時間となった。

ドキドキ賞

神奈川県 東幼稚園(岩岡夏輝先生)

賞品/絵本10冊

「せんせい? かえるはなんでみどりだかしってる?」かえるのお話を読んだ子どもからの突然の質問に逆に私は質問返し。「ええ、なんでなの?」その子は得意気に答えました。「あめはあお!ながぐつはきいろ!かさはあか!おはなはぴんく!もうみどりしかのこってないでしょ!」大正解のステキな発想。テレビに出てくるヒーローって確かにそうだ。紫陽花の時期になると毎年思い出してほっこりしています。
あの日から十数年。そんなステキっ子がなんと教育実習で戻ってきました。持ち帰った当時の月刊絵本は今でも大事に持っているそうです。「絵本にはあの頃の“キラキラ”が詰まってるんですよね!」きっと良い先生になるだろうなあという予感でいっぱいです。

びっくり賞

大阪府 ちびっこ保育園春日(A.T先生)

賞品/絵本10冊

わくわく食育のページで、子どもたちは世界の美味しそうなお料理をたくさん食べる真似をしてご機嫌さん。そして、その後のシール遊びで、スペシャルメニューを盛り付けていると、1人の子が、「私、もうお腹いっぱい食べたけど、先生は絵本ないから食べてないよね。先生にお料理あげるね」と、盛り付けたお料理を食べさせてくれました。喜んで食べる真似をすると、他の子も「僕も! 私も!」と次から次へと振る舞ってくれ、「もうお腹いっぱいになったよ。みんなありがとう」とみんなの気持ちでお腹いっぱいになりました。
そして、給食の時間。私のてんこ盛りのご飯を見て、「さっき、お腹いっぱいって言ってたじゃん!食べ過ぎじゃない?」と・・・

なるほど賞

埼玉県 草加ひまわり幼稚園(Y.W先生)

賞品/絵本10冊

4歳児クラスで総合絵本を自由に読み、片づけの時間になった時のこと。A君が「自分の本が見当たらない」と不安そうに訴えてきました。声をかけてみんなで周囲を探しても見つからず、とうとうA君が泣き出してしまいました。しばらくすると、B君が自分の棚から、A君の絵本を持ってきて「A君の本、ごめんね」と言いました。どうやら片づけている時に、自分の本と一緒に重ねてしまっていたようです。
大事そうに胸に抱えて、ホッとした表情のA君や、「A君の本」と言って持ってきたB君のやりとりを見ながら、全員が同じ絵本であっても、名前を書いて一人ひとりに渡したその時から、“その子だけの特別な1冊”となるのだと実感した出来事でした。

うるうる賞

新潟県 あおい幼稚園(C.S先生)

賞品/絵本10冊

園庭のあちこちで落ち葉や木の実に触れていた季節。“あきのたからもの”のページをみんなで広げシール貼りを楽しんだり、「これ、どんぐり、これはもみじ!」と、本とにらめっこしながら保育者と一緒に自然物の名前を少しづつ覚えていった満3歳児の子ども達。同時に、“たからもの”というフレーズも気に入り、自分が拾ったどんぐりや松ぼっくりを「たからものあった!」「たからものだから先生持ってて!」と大事にする姿がありました。どんなに形がいびつでも、無くさないよう自分の道具箱にしまったり、ポケットに入れたり、見当たらなくなると必死で探したり‥。
最後に“たからもの”は大好きなお家の方へのプレゼントとして、ラッピングして持ち帰りました。「たからもののどんぐりだよ!」とお家で嬉しそうに渡していた、と保護者からお聞きすることができました。
なにげなく拾っていた自然物でしたが、言葉の魔法がかかったことで子ども達にとって大切な“たった一つのもの”になることを実感しました。秋という季節に親近感を持つことができましたし、たくさん活用させていただいている、満3歳児にぴったりの絵本です。

わはは賞

山梨県 竜王北保育園(塩原愛菜先生)

賞品/絵本10冊

「今月のおしごとは…消防士さんです!」と月刊絵本を開くと「パパのおしごとだ!」と大喜びの5才児クラスの女の子。消防士さんはすぐにお仕事に行けるように、スボンを履きやすい状態に置いておくということが最初に載っていました。
月刊絵本を読み終わった後にその女の子が「パパおうちでもこうやって脱いでままにして怒られてたんだよ」と、ニヤニヤしながらこそっと教えてくれました。「あらあらっ」と思わず一緒に笑ってしまいました。

入賞

100名様

賞品/絵本1冊

4月中旬の賞品の発送をもって発表とかえさせていただきます。

月刊保育絵本エピソード大賞 表彰式

大賞

新潟県 あおい幼稚園

先生、園児の皆さんがホールに集まって表彰式が始まりました。
ステージ上には賞品の本棚と100冊の絵本がずら〜り! みんな大喜びでした。

受賞された先生の言葉

月刊絵本を使うと子どもたちの声がたくさん出てくるんです。それに、『やってみよう!』という気持ちが強いうちの園の子どもたちにはぴったり。毎月楽しみにしているんですよ。

大賞受賞の先生に表彰状が授与されました。

審査員特別賞

岡山県 ひばり保育園

受賞された先生に表彰状が授与されました。
表彰状を手ににっこり。
園長先生と一緒にお話をうかがいました。

受賞された先生の言葉

第一回の賞に選ばれて光栄です。
内容が豊富で保育に活かしやすいこと、自由に扱える「自分の本」であることが月刊保育絵本の魅力です。
持ち帰った後、保護者に読み聞かせをしてくれた、という声も聞きます。これからもしっかり活用していきたいです。

審査員特別賞

埼玉県 ひまわり南幼稚園

受賞された先生に表彰状が授与されました。
「この絵本は〇〇くん絶対喜びそう!」
「このしかけ、初めて見ました!」 
賞品の絵本を手に取り、たくさんの会話と笑顔が!

園長先生の言葉

こんなにバラエティーたくさんの絵本をありがとうございます! 大切に使わせていただきます。

審査員特別賞

福岡県 シマウマ保育園県庁前

受賞された先生に表彰状が授与されました。
賞品を前に先生方もうれしそうです。
なんと! エピソードの中に出てくる
蒸しパンを作ってくださいました。

受賞された先生の言葉

今回賞状をもらったのは私ですが、エピソードの中に出てくる蒸しパンは給食の先生、普段園生活を送れているのも他の先生のお陰なので、皆の表彰状だと思っています。子どもたちも表彰式の厳粛な雰囲気を感じながらお祝いしてくれて、嬉しく思いました。