2. うつぶせ寝による死亡事故を防ぐ

猪熊 弘子 理事
駒沢女子短期大学教授

2023年12月、東京都世田谷区内の認可外保育施設で、うつぶせ寝により0歳児が亡くなる事故が起きていたことが、今年2月に入ってから明らかになりました。ほかにも2023年には宮崎市で、また2022年7月には沖縄県那覇市、茨城県土浦市で、いずれも認可外保育施設でうつぶせ寝による死亡事故が起きています。

うつぶせ寝についてはSIDS(乳幼児突然死症候群)の危険があるとして『教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン』(*1)にも「医学的な理由で医師からうつぶせ寝をすすめられている場合以外は、乳児の顔が見える仰向けに寝かせることが重要」と記されています。保育施設には「医学的な理由でうつぶせ寝をすすめられている子ども」はおらず、現在では保育施設においてはうつぶせ寝は禁止されていると言ってよいでしょう。にもかかわらず、未だに各地の施設でうつぶせ寝が行われ、毎年のように子どもが犠牲になっている事実に怒りを禁じ得ません。

アメリカでは1994年から小児科学会が「Back to Sleep」(仰向けに寝かせる)運動をスタートさせ、SIDSで亡くなる子どもが激減した事実があります。しかし日本では1990年代後半までの日本では「頭の形が良くなる」などとしてうつぶせ寝が推奨されていました。その時代に子育てをした現在60〜50代後半の世代の人たちが、自分の子育て経験だけに基づいて保育を行っているような保育施設では、うつぶせ寝が平然と行われる場合もあるのかもしれません。実際に、ある園で子育てを終えた世代のパート職員がうつぶせ寝をさせていたという話を聞いたこともあります。

うつぶせ寝をさせなくなったことで、認可保育所での睡眠中の乳児の死亡事故は確実に減っています。ほかにも、子どもの表情や顔色が見える明るい部屋で寝かせること、呼吸チェックを行うこと(1歳までは5分おき推奨)、布や布団などが顔にかからないようにするなどの対応が必要です。モニターなどのICT機器も登場していますが、100%機械に頼るのは心配です。保育者の丁寧な対応と緻密な連携で仰向けに寝かせることを徹底していくしかありません。

(*1) 『教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン』